家電

2012年3月30日金曜日

太陽光発電のパネルにもいろいろある? 素材別のメリット・デメリット

一戸建ての屋根に輝く、太陽光発電用のパネルを一度も見たことのない人はいないだろう。
太陽の光を電気に変える「太陽電池」の集合体。太陽光発電の効率を左右する核になる部分だが、実はこの太陽電池にも種類があることはご存じだろうか? 

住宅用の太陽電池は、使われている素材や形状によって主に3つに分類できるという。現状主流となっているのは1種類だが、ほかの種類も取り扱いが増えており、今後の太陽光発電の導入・運用コストへの影響は小さくなさそうだ。それぞれの特徴や今後の開発展望も含めて、太陽光発電研究センターの櫻井さんにお話を伺ってみた。

 ■住宅用太陽電池は主に3種類
「太陽電池は、その中に用いられている材料やその形状によって分類できます。
住宅用で言えば、現在の主流はシリコン系の『結晶シリコン太陽電池』。国内市場の8割近くがこれにあたり、残りの2割がシリコン系の『薄膜シリコン太陽電池』と化合物系の『CIGS系太陽電池』です」と櫻井さん。まずはそれぞれの特徴を比較してみた。

 ■いろんな屋根形状に合わせられる、結晶シリコン太陽電池  シリコンを使った2種のうち、結晶シリコン太陽電池は一番古くから利用されているもので、最も広く使われているので、性能やパネルの形状など、製品の選択肢が豊富。「価格幅も広く、概して変換効率が高いものほど高価ですが、同じ設置面積で発電できる量が増えます。それに伴って売電できる量や元が取れるまでの期間が変わりますので、いろいろな価格や性能の製品でシミュレーションしてもらう事をお勧めします」と櫻井さん。パネルデザインも豊富で、「寄棟屋根などにも合わせやすい、三角形や細長い形状の製品があるのも利点です」。外観にこだわりたい人でも、選びやすいようだ。

 ■軽くて、強度が高くない建造物にも設置しやすい薄膜シリコン太陽電池  薄膜シリコン太陽電池は、電卓や時計などに用いられてきた太陽電池。最近では開発が進み、屋外用にも実用化されている。櫻井さんによると、「同じシリコン系でも、結晶シリコン太陽電池に比べて約100分の1と極薄。量産性の高い太陽電池」だという。

「薄さを活かした、軽量で柔軟な『フレキシブル型』と呼ばれる製品もあります。軽いので、比較的強度の低い建造物にも設置しやすいのもメリットですね。ただし、発電効率がまだ低いので、現状では、発電量が少なめでも、屋根を補強する費用を抑えたい場合や、工場や学校など、設置面積を広くとれる場合のほうが向いていると言えるでしょう」。


 ■発電効率アップで注目されつつあるCIGS系太陽電池  「CIGS(シーアイジーエス)とは、Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)の4つの元素の頭文字をとったもので、シリコンの代わりに、この4つに代表される元素を混ぜ合わせた化合物を使ってつくられます。一般家庭用に販売されはじめたばかりの新顔ですが、省資源で量産しやすく、価格を抑えやすいため、最近急激に生産量が増えています。

デザイン的には、黒一色のすっきりした外観が特長です」と櫻井さん。「今はまだ発電効率が低めですが、研究段階では結晶シリコンと同等の性能が確認されていますので、今後開発・量産化が進めば、結晶シリコンと並ぶ主力になる可能性を秘めた注目株と言えるでしょう」。

 ■ベストな導入時期はその人次第。補助金や売電制度も考慮して  上記の3種のほかにも、加工しやすい有機物を利用した太陽電池なども登場し、熾烈な開発競争のなかで、まさに日進月歩の太陽電池。価格も年々下がる傾向にあり、「2010年度の国内平均価格が約60万円/kWだったのですが、太陽光発電の先進国ドイツでは、2011年には約22万円/kWにまで下がっています。
流通量がさらに増えれば、国内でもさらに価格は下がってくるでしょう」。こうなると、「もっといい製品が出てから」と考える人も多いかもしれない。しかしその一方で、「太陽光発電による余剰電力の買い取り金額や補助金も年々下がってきていて、『いつが買い時』とは言いにくいのが現状です」と櫻井さん。

「家を建てる時期など、個人個人のタイミングを逃さないことのほうが大切でしょう。また、太陽光発電は、20~30年にも渡って長く付き合うもの。購入時には、即決するのではなく、複数の製品の見積もりを、じっくり比較検討されることをお勧めします。購入後も放置せず、毎月の発電量は記録しておき、異常がないかどうかチェックを忘れずに。きちんとメンテナンスして、長く、賢く、太陽光発電を活用してほしいですね」。



太陽光発電工学研究センター 櫻井啓一郎さん 京都大学大学院工学研究科電子物性工学専攻博士後期課程修了、博士号取得。国内外の研究機関を経て、現在、産総研 太陽光発電工学研究センター 研究員。著書に「波に乗れ にっぽんの太陽電池」「トコトンやさしい太陽電池の本」「国民のためのエネルギー原論」がある。

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