KING JIM デジタルメモ「ポメラ」 DM100クロ ブラック 新品価格 |
■ キーボードが折り畳みではなくなった新しいポメラ
キングジムが2011年11月25日から発売した「ポメラDM100」を試用する機会を得た。
わたしは、モバイル環境での原稿執筆においては、10年前にNECが最終モデルを発売した「モバイルギア MC-R550(以下、モバギ)」を、いまでも使用している。
リリースや取材ノートなどの数多くの資料が散乱することが多い会見会場の机の上で、記事を執筆する際になるべく小型なデバイスが適していること、移動中の電車のなかでも記事を書く機会が多いため、パッと開いて、パッと起動するモバギの利便性は、まさに適していたからだ。
その点で、以前からキングジムのポメラの存在は気になっていた。だが、なかなか踏み出せないでいた。
それは、折り畳んだキーボードを開く動作に納得がいかなかったからだ。また、折り畳みキーボード特有の剛性的に弱い感じが気に入らなかった。
わたしは作業上、電車のなかや街角で、立ったまま片手で文字を入力するというケースも意外に少なくない。これは特殊な使い方であることは理解しているが、そのときに、従来のポメラではキーボードを開くという作業がちょっと手間になる。
ところがモバギであれば、蓋を開けばすぐに入力体制が整うのである。電車から降りるときにも、パッと閉めることができる。
構造上、こうした使い方ができないポメラは、自分の用途には合わないと敬遠していたのである。
ところが今回発売したDM100は、キーボードを折りたたまずに利用できるストレート型といわれる形状となっており、電車のなかで立って入力ができ、電車ホームに着いた途端にパタっとワンアクションで閉めることができるようなった。
ストレート型は折り畳み型よりも、モバイル環境には適しているというのが筆者の持論であり、その点、今回の製品は、筆者のような特殊な用途にも利用できるものとなったのだ。
そんなわけで今回は、DM100をモバイル用途で記事執筆に利用するという、ある種「特殊」な観点からの試用レポートをお送りする。なお、筆者はJIS配列のかな入力で使用しているので、その点ご承知いただきたい。
■ 電源は単三電池2本で、バッテリーの心配はほとんどいらない
まず、持ってみての第一印象は、軽くて持ち運びに便利というものだ。
約399gの重量は、デジタルカメラや取材資料といった、ほかのものと一緒に持ち運ぶ必要性がある仕事の上では、非常に有効である。また、24.6mmという薄さも使いやすさを支えてくれる。天板がフラットであり、鞄から片手で気軽に取り出すことができる端末だといっていい。
さらに、駆動時間の長さにも驚く。筆者の場合、電池寿命が25時間となるeneloopを使用しているが(単三形アルカリ乾電池では約30時間)、毎日原稿を執筆するという使い方をしても、1週間経過した時点で残量表示はフルのままだ。原稿を執筆するという比較的ハードな使い方をしていても、意外と電源をオンにしている時間が少ないことに気がつく。
従来の製品では単四形アルカリ電池を2本使用していたが、DM100では単三形としたことで駆動時間を長時間化。また、単三形という、もっとも入手しやすい乾電池になったこともありがたい。
この「バッテリーを気にしなくていい」という安心感はモバイルワーカーにとっては、予想以上のものだ。
自宅に帰ると毎日充電をし、外出先ではコンセントを求めて、マクドナルドやルノアールを探し、関西方面への出張は必ずN700系の窓際を確保するということが日常となっていただけに、どこでも、長時間に渡って利用できるというポメラの使い勝手はまさに感動ものである。
また、eneloopを使えば充電を繰り返せばいいわけで、使用済みの乾電池がオフィスの机のまわりに溢れかえるということもない。
■ ストレートタイプのキーボードでワンタッチで開ける
そして、ワンタッチで開く形状は、モバイル利用においては、利便性が高い。
従来のキーボードを開く構造は、コンパクトになる分、持ち運びには適していると見られがちだが、筆者の場合は鞄を携行していることが多いため、そのなかに入れられれば、そこまでコンパクトにする必要はない。
いや、むしろ、ワンタッチで開く方がモバイル性が高まるとも判断している。
ただ、DM100は少し蓋が開けにくい形状となっており、ここは改善してほしい部分でもあった。
一方で、キーボードの配列も文字入力に特化するという点では余計なものがなく、入力に最適化したシンプルなものとなっており、17mmのキーピッチは入力性にも優れている。アイソレーションキーボードであることもしっかりとした入力をサポートしてくれる。
欲をいえば、ファンクションキーがやや大きめであり、その分、「F5」から右のキーが配置された位置が多少気になる。例えば、カタカナに変換するために「F7」を押す際には、一般的なノートPCのキーボード配置よりも、やや右寄りを意識しながら指を移動させる必要がある。
なお、ファクションキーには様々な機能が割り当てられているが、これらの機能を文字入力中にも表示できるようになっているといいだろう。
筆者の場合、記者会見などのニュース原稿を執筆する上では、2,000文字前後が1つの目安となる。つまり、迅速に記事を入稿する必要性に迫られ、モバイル環境で利用しなくてはならない場合、2,000文字前後のテキストをスムーズに入力できればいいということになる。
その点では、デフォルトで設定されている24ドット×24ドットの文字サイズであれば、DM100で大型化された5.7型のSVGA(800×600ドット)液晶ディスプレイでも、なんどかスクロールさせるだけで、すべての文章を見渡せるなど、十分使用できる。
このモードでは全角で33文字×18行が表示でき、約600文字換算となる。原稿用紙1枚半というざっくりとしたイメージができあがる点も書き手としてはうれしい。これは新書の1ページぐらいの分量にあたる。文字サイズは8段階で表示が可能なので、使いやすい文字サイズを柔軟に選ぶことができる。
なお、1ページあたりの行数と文字数を固定するフレーム表示機能もあり、これにより任意の表示環境や行数指定も可能だ。
■ バックライト液晶で画面が見やすく、疲れにくい
また、光が入り込む電車の座席に座って使ってもみたが、その状況でも視認性が良かったという点も評価したい。ポメラとしては、初のバックライト方式を採用しているだけでなく、ノングレアのモノクロTFT液晶であることは、同時に長時間使用時の目の疲れを緩和してくれるようだ。
もちろん、バックライト方式によって、暗い場所での入力が可能になった点も、従来のポメラからは大きな進化だといえる。
ただ、閉口したのはテキスト量が多い原稿の場合の使い勝手だ。
従来のDM20では、1ファイルあたり2万8千字が上限であったが、今回のDM100は4万字を上限としている。
別のPCで約1万文字の原稿を執筆し、この見直し作業を、電車での移動中にポメラを使って行なってみたが、スクロールに時間がかかってしまう。
Alt+↓キーで、画面表示単位ごとにスクロールするが、立ったままで片手で操作している際のスクロール操作はやっかいだ。また、原稿全体のどの領域を表示しているのかといったガイドがないのも不便である。
また、付箋文という機能を利用することで、指定した部分に飛ぶことができるようになっているが、効率的に利用するには少しノウハウが必要だ。
もう少しファンクションキーを小さくすることで、1ページごとにスクロールできるような専用キーを配置したり、高速スクロールができるようなショートカットの設定があってもよかっただろう。
さらに困ったのは、電源を切り、再度起動した時に、表示される文章が必ず文頭になってしまうことだ。これはデフォルトで設定されているモードであり、実は、メニューから「書式」→「カーソル位置保存」→「電源オフ時のカーソル位置」で設定すれば、変更は可能だ。オープンパワーオン設定との組み合わせで、さっと使える環境ができあがる。
ただ、「電源オフ時のカーソル位置」設定については、マニュアルにはメニューキーの1つとしての説明はあるが、ユーザーがこの設定変更を理解するにはわかりにくい。この機能の設定変更に関してはもう少しわかりやすく表記した方がいいだろう。
実はこの設定変更を知ったのは、1万文字原稿の見直しが終わってからだった。
電車から降りる際に電源を切り、乗り換えた電車で起動させるとまた文頭に戻ってしまうため、1万文字の原稿の見直し作業では、この初期設定が問題だった。
もちろん、ポメラのもともとの発想がメモを取るということだけに、長文を扱うということはあまり前提としていないのは理解できる。しかし、1ファイルあたり4万字までに拡張したのだから、それを前提とした機能の強化や説明に、もう少し配慮がほしいと感じた。
■ ネットワーク対応は今後に期待
そして、やはりポメラにおいては、ネットワーク対応という点では、もう一歩踏み込んでほしいと思う部分がある。
原稿を入稿するには、当然、ネットワークを通じて送信しなくてはならない。原稿をいつまでもポメラの中に蓄積していては、読者の目に触れることはないからだ。ニュース記事であれば、いかに早く編集部に原稿を入稿することができるかが1つのポイントとなる。
これまでネットワーク機能は完全に排除していたポメラだったが、今回のDM100では、Bluetoothに対応した点が特徴といえる。
これにより、PCにBluetooth接続し、データを転送できるようになった。つまり、無線LANなどの通信機能を有したノートPCと接続すれば、それを介して、原稿が入稿できるようになる。
しかし、接続の相手が机の上に固定したPCなどであればいいが、モバイル環境でポメラとノートPCを接続するというのは、あまり現実的ではない。新幹線や長距離列車でなければ、座席に座ったとしても電車のなかで、2台の端末を並べてBluetooth接続するというのは厳しいからだ。また、Bluetooth接続がなかなか行なわれない場合はイライラの原因になりかねない。
これはUSB接続でも同様だ。やはり2台の端末を並べて、同時に起動させておくことはモバイル環境では現実的ではない。
結局、モバイル環境で現実的なのは、SDカードでやりとりするということになる。これが一番手っ取り早い。ポメラで書いた原稿をSDカードに保存し、ポメラを閉じ、ノートPCを立ち上げて、SDカードから読み込んで、Wordなどに貼り付けるという方法だ。
これまでのポメラではmicro SDあるいmicro SDHCへの対応だったが、DM100ではSDHCカードに対応しており、ノートPCとの親和性も高く、その点でも、データ移行はこの方法が最適と判断した。
もちろんポメラでは、QRコードを利用したデータの移動も可能だ。
分割すれば最大4,800文字の原稿までをQRコード化できるため、これを利用して、テキストデータを送信することもできる。ポメラには、液晶部横に、QRコード専用ボタンがあり、これを利用すれば、操作も楽だ。
ただ、一度に転送可能な文字数は最大で300文字(100文字、200文字も選択可能)。4,800文字というのは、300文字のQRコードを最大で16分割まで可能とすることで実現するもの。
iPhone 4Sを使用して、この作業を行なってみたが、2,000文字の原稿を送信する場合、7つのQRコードを読み込む必要があり、作業がやや煩雑になる。
iPhoneを利用する場合は、App Storeで無償で提供している「ポメラQRコードリーダー」をダウンロードすれば、読みとったあとの作業は楽になるが、読み込みからの作業工数を考えると、長文になるほど、作業時間がかかり、実用性が落ちる。
こうしたことを踏まえると、最終的に期待したいのは、やはりポメラからの直接送信だ。
ポメラの製品コンセプトを打ち破るような話ではあるが、ここまで進化してくると、次はやはり通信機能がほしいということになる。
SDカードスロットが標準搭載されたことで、Eye-Fiや、東芝が来年に製品化を予定しているSDHCカード対応の「FlashAir」などがテキスト送信にも対応できるようになれば、ポメラからの直接送信も可能になるだろう。そのあたりの動向は現時点ではわからないが、DM100利用者にはとっては気になる動きの1つということになりそうだ。
■ メモだけでなく原稿執筆にも充分使える
文字入力に特化したツールという点で、今回のポメラの進化は大きく評価できる。そして、モバイル環境で入力する上でも、これまでの折り畳み式に比べて、より最適化されたものだといえる。
喫茶店や会見場といった限られた机の上に置いても入力できること、膝の上においても入力しやすく、立ったままの状態でも片手で入力できるという点も、これまでのポメラにはできにくかった部分だ。
個人的な意見をいえば、メモを取るツールから、もう少し文章量が大きい原稿執筆用のモバイルツールとしても利用できるようになったといえる。
それだけに、「あとは通信機能がほしい」と、どうしても思ってしまうのである。このあたりは、まずは、無線LAN対応SDカードを活用するというエコシステムによって解決してもらいたい。
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